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2階建て単身者用アパートの1階なんかにある、町のレンタルビデオ屋でバイトしたい。
そんな夢を自動車学校の卒業文集に書いたことがあります。
映画とかでよくある設定。あれに憧れてました。

白い蛍光灯が強烈に明るくて、せまくて、品揃えの悪い店。
BGMが流れてたり流れてなかったりの店。
そんなところで青いエプロンなんかして、一人さびしくレジに立ちたい。

しかしそんな店はバイトの募集なんてメッタに出しませんね。
店主とごく少数のベテランさんがドッカリ座ってるのかな。
んならせめて客として通って、通って、夜のレンタルビデオ店。
なにか事件が起きてくれないか━━。
巻き込まれないか━━。
ドラマ。
恋。

みたいな夢を見ていました。
ブレーキとアクセルを踏み間違えたキャロルが突っ込んでこないかな♪
ビデオテープを詰めたゴワゴワのゴムみたいな袋を抱えて月の下をお店に向かって歩くとき
客と店員がカウンター越しに別れ話で揉めてないかな♪
なんて期待しちゃうのはナゼなんでしょう。

「もう帰ってよ」
「……おれは━━」
ここにテロレロテロレロとバカな出囃子で登場することについて、僕は非常に不満です。
2人がこちらに顔を向ける。いらっしゃいませー。
「もう別れたんだから来ないでよ」
「別れろよ」
BGMの流れてない日。
僕は特殊な空気に気づいて、レジに近づき難くて、せまい店内を1周。
「無理なの。出来ないの」
「だっていつか言ってたじゃ……」
しかし小さなお店、すぐに2人の側まで来てしまった。
僕はひどく狼狽して、こじれた別れ話の間に袋を突き出してしまった。
店員が僕をイチベツ「ご返却でよろしいですか」
「はい」
先客は黙ったまま。店員から目を離さない。
「こないだはすみませんでした。1本も巻き戻してなくて」
何度やっても改められない僕のミス。
「あ、はい。いえ」
袋を受け取った店員はテープのフタを開けてさっと何かを確認した。
「今度はエンドロールも最後まで見てあげてください。面白かったら」
「ああ!それ面白いですね。テープがエンドロールの後ろで止まってるビデオは面白かったと。
 前で止まってる場合はそうじゃなかったと」
先客が黒ブチメガネ越しに僕を睨んだ。
「開始1時間のところだったら駄作」
と言って店員はレジを打った。
「それより前だと、映画よりドラマチックな何かが見てる人に起きたとか」
彼女はちょっと笑ってそう言って、僕を見る。
僕も彼女を見る。いや、ずっと見つめていたんだ。
僕たちは1秒の半分だけ見つめあった。
「1週間の延滞ですね。3500円になります」


おわり



あとがき


自動車学校の卒業文集ってのは何か深遠な何かの比喩です。つまり嘘です。

静かなお店だから入店時のテロレロテロレロが余計ひびくわけです。

レンタルビデオ店で客と店員がカウンター越しに別れ話をこじらしている。
これはとっても個人的なレンタルビデオあるあるなんです。

この店員さんには旦那がいるんでしょうね。
なのに夜になってもパートしなきゃならない事情。
若い男と不倫したんでしょうね。

いま、マツダのキャロルはスズキのアルトになってしまいましたが、
その前の3代目?がちょっと好きです。



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